単純ヘルペスとは
単純ヘルペス(単純疱疹)は、単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染によって起こる皮膚疾患です。放っておいても1~2週間ほどで治りますが、痛みなどの症状が強い方や1日でも早く治したい方は、皮膚科への受診がおすすめです。
HSVには1型(HSV-1)と2型(HSV-2)があり、唇や性器など体のさまざまな部位に水ぶくれを伴う症状が出現します。
| ウイルスの種類 | 主な感染部位 | 一般的な病名 |
|---|---|---|
| 1型(HSV-1) | 口の周り、唇、顔など | 口唇ヘルペス |
| 2型(HSV-2) | 性器、肛門周囲 | 性器ヘルペス |
近年では両型の感染部位に明確な違いはなく、どちらのウイルスも全身に感染する可能性があります。感染後はウイルスが神経節に潜伏し、免疫力が低下した際に再活性化して再発を繰り返すのが特徴です。
症状
単純ヘルペスの症状は、感染した部位によって異なりますが、いずれも小さな水ぶくれを伴うのが特徴です。発症の前に皮膚にチクチク・ピリピリとした違和感やかゆみを感じることがあり、その後に赤みが出て水ぶくれが現れます。水ぶくれは1〜2週間ほどで自然にかさぶたとなり、治癒します。
主な症状の現れ方は以下のとおりです。
| 感染する場所 | 主な症状 |
|---|---|
| 唇や口のまわり |
|
| 性器やおしり |
|
| 指 |
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原因
単純ヘルペスの原因は、単純ヘルペスウイルス(HSV)への感染です。ウイルスは、皮膚や粘膜の小さな傷から体内に入り、接触によって感染します。とても身近なウイルスであるため、20~30代では約半数の方が感染しており、60代以上ではほとんどの方が感染していると言われています。
一度感染すると、ウイルスは神経節に潜伏し、免疫力が低下したタイミングで再び活動を始めます。これが再発を繰り返す原因です。
再発のきっかけとしては、以下のような要因が挙げられます。
- 風邪や発熱などで免疫が低下したとき
- 疲労やストレスが続いたとき
- 強い日差しを浴びたとき
- 女性の場合、月経や体調不良によるホルモン変化
現在、体内のウイルスを完全に除去する治療法は存在せず、再発時に治療する対症療法が基本となります。
検査
単純ヘルペスは、特徴的な皮膚症状により、診察だけで診断がつくことが多い病気です。ただし、症状が不明瞭な場合や他の疾患(例:帯状疱疹)との鑑別が必要な場合には、検査を行うことがあります。
主に行われるのはウイルス検査です。水ぶくれから採取した液を用いて、ウイルスの有無を調べます。
治療
単純ヘルペスの治療は、ウイルスの増殖を抑え、症状を軽くして回復を早めることを目的としています。現在の医療では、体内に潜伏するウイルスを完全に排除はできませんが、再発時に早く治療を始めることで症状をコントロール可能です。
治療には以下の方法があります。
- 内服薬:ウイルスの活動を抑える薬で、症状が広範囲または重症の場合に使われる(例:バルトレックス、ファムビル)
- 外用薬:患部に直接塗布し軽度な症状に使用され、副作用が少ないのが特徴
内服薬については、どちらの薬も5日間内服していただくと、症状はほぼ軽快します。また単純ヘルペスの症状を年3回以上繰り返す方には、再発したときのための薬をあらかじめ処方することも可能です。PITと呼ばれる治療法で「ファムビル」と「アメナリーフ」の2剤が保険適応となっています。
治療開始が早いほど軽症で済むため、違和感を覚えたら早めの受診が大切です。
日常生活での注意点
単純ヘルペスの症状が出ている間は、自分の体を守るケアと、周囲への感染予防の両方が大切です。まずご自身の症状を悪化させないために、次の点に注意しましょう。
- 患部を清潔に保つ:二次感染を防ぐために、よく泡立てた石けんでやさしく洗う
- 患部に触れない:触った手で他の部位にウイルスを広げてしまう恐れがある
- 体調管理を心がける:疲れやストレスが再発のきっかけになるため、睡眠と栄養をしっかりとる
また、他の人にうつさないためには、次の配慮が必要です。
- キスや接触を控える:水ぶくれがある間は、直接的な接触で感染が広がる可能性がある
- タオルや食器の共有を避ける:ウイルスが付着したものを介して感染することがある
- 性行為を控える:性器ヘルペスの症状がある間は、感染リスクが高くなるため避ける
特に、皮膚に傷がある方や免疫力が低下している方は重症化のリスクがあるため注意が必要です。
単純ヘルペス(口唇ヘルペス・性器ヘルペス)をはじめとする皮膚トラブルは、適切な治療が遅れると症状の悪化や、ご家族など他者へ感染させてしまうことがあります。当院の皮膚科では、ウイルス感染症や免疫力の低下など、多様な原因による症状に幅広く対応しています。
患部に「ピリピリ・チクチク」とした違和感を感じたら、水ぶくれができる前でも早めにご相談ください。内科・消化器内科を併設している強みを活かし、全身の状態を踏まえた診療で、再発しにくい適切な治療方法をご提案します。ご自宅でのケアについても、わかりやすく丁寧にアドバイスいたします。


